ROCK SHOW

「ザ・ビートルズ」解散後の1971年にポール・マッカートニーが結成したバンド「ポール・マッカートニー&ウイングス」のステージを収めたドキュメンタリー。

バンド絶頂期の76年に行われ、当時、屋内コンサートとしては世界記録の6万7000人を動員した米シアトル・キングドームでの公演を中心に、圧巻のステージの模様が収められている。

81年に日本だけ特別に7曲多く収録された完全版(邦題「ROCK SHOW」)が劇場公開。

2013年、35mmからレストア&リマスターされた映像・音響で初のDVD&ブルーレイ化が実現。

見どころ解説


 ヴィーナス・アンド・マース/ロック・ショー/ジェット-Venus and Mars/Rock Show/Jet

 

 まず有権者の皆様に訴えたいのは、このオープニングが全盛期 Wings の最強メドレーだということ!

もともとアルバム『Venus and Mars』は、ライブを想定して作られただけあって まさに”ドンピシャリ!”にハマった、圧倒的なカッコよさです。

 

 大歓声とスモーク、バブルが降り注ぐ中、悠然と歌い始めるポール。

歌詞に合わせて、”Red lights "(ジミー) → ”Green lights"(デニー) → "Strawberry wine"(ジョー)・・・と同じ色のライティングでメンバーを紹介していき、"Good friend of mine" でリンダを照らす演出がなされております。

 

曲調が一気に変わり、さあ!待ちに待ったロックショウの始まりです!!

 

ここでリンダはグランドピアノへ移動・・・ということは、”あの鐘を鳴らすのは誰!?”
デニーも12弦から6弦へ切り替えます。サムピック使ってますね。

 

  この時期のワールドツアーで重要な役割を担うホーンセクション4人の出番は「JET」からですが、それまでカウベルとタンバリン、サックスの二人は手拍子でノリノリです。

 

開演のファンファーレにふさわしい「Rockshow」から続く「JET」への連結部分はいつ観ても最高!!

 リンダはキーボードソロの前に「JETs!」と左手を上げてます。その勢いでソロを弾くのは難しそうだと思ってたら、編集映像でした。

映像は定説通り1976年6月10日シアトル・キングドームでのショウを中心に編集されてますが、ところどころで不自然な場面に気づきます。

ちなみに、ポールの首元で収録日の違いを判断できますが、どれがどの日かまでは・・・マニアの方にお任せしまショウ。


レット・ミー・ロール・イット -Let Me Roll It

 大ヒットアルバム『Band on the Run』よりのポール熱唱ナンバー。

映像の音源では分かりづらいですが、実際のライブではボーカルに過剰なまでのリバーブ(エコー)がかかってます。ジョンを意識したといわれてますが、いまいちピンときませんね。

小曲でありながらポールはお気に入りのようで、最近にいたるまでライブではほとんど演奏されています。

ベースはRickenbacker 4001s

ビートルズ時代の1965年にリッケンの社長から直接手渡されたというこのベースは、様々な遍歴をたどった後、ポール自身の気まぐれな改造により 映像のようなナチュラルでツノ削りのシェイプとなっております。

ハードロックやグラムロックやの影響なのか やや下げ気味に構え、ブンブンに振り回します。

ビートル時代はDownオンリーのピッキングでしたが、この時期は手首を使ったオルタネイトでのルート弾きやUPピッキングが目立ちます。ブリッジよりのピッキングがこのサウンドの肝。

また この曲では解放弦を多用しますので、”0フレット”と”ミュート機能”も効果的。

ピックアップは常にセンター、弦はフラット弦だそうですが、アンプは50WのFender Bassman


遥か昔のエジプト精神 -Spirits of Ancient Egypt

「This is Denny Laine!」メンバーの紹介もかねてメインボーカルをデニーに譲ります。

ポールはWings初期からこのスタイルを貫いており、各メンバーとの対等の関係をアピールしているかのようです。

Wingsはポールのバックバンドではありません。あくまでもバンドにこだわったポールの意地の結晶なのです。(この時期のバンド表記は本来”ポール云々”が無い正真正銘の「WINGS」)

この曲は北軍南軍のテーマを同時に弾いたといわれる?チェット・アトキンスから貰った、ピラミッドの本をヒントにポールが書いた曲で『Venus and Mars』に収録されてます。あの"ポヨヨヨ~ン"という音はムーグのシンセ音でしょう。

さて、ひときわ目を引くIbanez(我々の世代はイバニーズ)2670 Twin Neck。ボブウェアモデルともいわれます。現在は金銭的に?入手困難だそうです。


・ メディシン・ジャー -Medicine Jar

『同じくVenus and Marsから…』とデニーより紹介を受けた最年少のジミーがボソッとMC。

ジミーの古くからの盟友コリン・アレンの共作によるシャッフル調のドラッグソングです。

どうもコリンはジミーのことを詩に書いたよう。「ヤクはダメだよ!」という歌なのに、酒と薬に溺れた若者を救うことが出来なかったことは残念でなりません。早熟の天才ギタリストでした。

注目は頻繁にギターのヴォリューム調整をするジミーです。

・・・といっても当時はギタリストとして当たり前のテクニックで、歌やバッキング時は抑え気味にして、ソロの時はフルアップ!ということを全て手元で行ってます。今のようにソロの時に音量を稼ぐためにエフェクターやペダルを踏む…なんてことは本来邪道なんです。

ギターはギブソンSG STD。ノブはスピードタイプで、ペグはクローバータイプ。

ピックアップはリアが主。アンプはマーシャルのキャビですが、ヘッドはフェンダーで結構歪んでトレブリーなサウンドですね。ワウとおそらくフェイザー(MXR?)を繋いでます。


・ メイビー・アイム・アメイズド -Maybe I'm Amazed

ポールがピアノ、デニーがベースに回って奏でるのは、初のソロアルバム『McCartney』に収められた珠玉のバラード。

ライブの定番でアレンジや歌い回しが年代によって変わってますが、ここでの演奏形態がベストであることに異論はないでしょう。ポールのシャウトも圧巻です。

「さあ、ギターソロだ!」とジミーにハッパをかけるデニーのベースのブリッジ付近に、ミュートのための”スポンジ”が確認できます。サウンド面を考慮したポールの指示によるものと推測されてます。

ところで、背景に映し出される三日月マークは何のイメージでしょうか?75年のツアーでリストに入っていた「C moon」との関連も指摘されますが・・・。


・ コール・ミー・バック・アゲイン -Call Me Back Again

「ニューオリンズでレコーディングしたんだ」とのMC。短縮版ではカットされましたが、LIVE映えする派手なアレンジの楽曲です。

前半からそんなに絶叫して大丈夫か?と心配になるポールのヴォーカル。声の出し方や喉の使い方が凡人とは違うんでしょう。そもそも骨格が違うと思います。

ポールのプレイスタイルの特徴の一つに、左足のステップでリズムをとることが挙げられます。

ここでは3拍子なので、"ズン・チャッ・チャッ"というリズムを、”ズン”をつま先、”チャッ・チャッ"をかかとで規則正しく刻んでます。とかく日本人はリズム感が無いと言われますが、天才でもこうですから、凡人は数百倍の努力が必要かも?


・ レディ・マドンナ -Lady Madonna

「カナダから来た人~?アメリカ人はどう~?」とこのツアーお約束の掛け合いの後、ビートルズ時代の曲を封印していたポールは「時代の霧の中から一曲や­ろう」と懐かしげです。

ベースがジミーにスイッチ、デニーはダブルネックギターで変態プレイを聴かせてくれます。

もちろん観客はやっと聴けたビートルズナンバーに大喜び!

さらに「Once Again!!」と追い打ちのリプライズ(アウトロの繰り返し)!!どや顔のポールは正にショーマンでございます。『WINGS OVER AMERICA』版は約1ヵ月ほど前の収録(1976年5月7日デトロイト公演)でリプライズがありませんが、元々付いていない演奏だったと言われています。

何気に歌が上手いジョー・イングリッシュこの曲はビートルズのバージョンと違い、勢いのあるポールのイントロがテンポのカギですが、ジョーのそれは独特。ここではゆったりとしたノリで叩いてます。おそらくバンマス・ポールの歌を活かしたドラミングを心掛けていたのでしょう。


・ ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード -The Long and Winding Road

興奮の前曲から一転、観客の反応を確かめるように一音一音ピアノを弾いた後、おもむろに歌い出すのは・・・言わずと知れたポール史上最高峰の傑作バラードです。

ポールはこの曲に相当な思い入れがあるらしく、ある日本のポール・トリビュータ―に「きみはこの曲をやるのか?」「うん。あれはいい曲だ…」と自画自賛してたとか。

そうでなくても、アレンジやコードまで改悪されてしまった経緯がある曲なので、大事に大事に演奏されているような気がします。

映像は、おそらく5月25日のニューヨークMSGでの収録で、切り替え無しのワンカメラ(まるでブート)。

ん・・・、ニューヨーク!?

そう!当時NYにはジョン・レノンが住んでいて、2人の関係はすでに改善されていたといわれており、ポールは公演に招待していたそうです。しかし「面倒になる」との理由で実現してません。

曲も素晴らしいですが、詩がジョンを意識したメランコリックなものだけに しみじみと感じ入るものがあります。


・ 007死ぬのは奴らだ -Live and Let Die

前半戦のハイライトは、「イギリス諜報部員が云々…」と良き伴侶リンダが曲紹介。

マグネシウム爆発!レーザー光線にストロボ効果!・・・と、ド派手な演出で観客の度肝を抜きます。

静から動、動から静への切り替えも見事。この演出は現在まで脈々と受け継がれる伝統芸となっております。(この時は耳栓まで要りませんでしたが・・・^^;

73年のライブ演奏や74年の「One Hand Clapping」では「ジャーン!」と壮大に終わってましたが、75年ツアーのリハーサル音源ではもうやってません。E♭で余韻を残すこの終わり方は、この演出があればこそでしょう。

ホーンセクションの活躍と、リンダのキーボードがこの曲ではいい味出してます。

ステージ右手 ”キーボード群”の向かって正面がメロトロン。右手はハモンドオルガン。左手はフェンダーローズピアノやソリナ、ムーグのシンセと思われます。

「この頃のウイングスは調子よかったよ。素人だったリンダがきちんとキーボード弾けるようになっていたしね」とは御大のお言葉。今だにリンダの演奏技術やコーラスについてとやかく言う輩は、当時のマスコミのネタに洗脳されてますよ。まあ確かにオーバーダブ も多く、ブート音源を聴いてると ひっくり返る時もありますが…(爆)


・ ピカソの遺言 -Picasso's Last Words (Drink To Me)
・ リチャード・コーリー -Richard Cory

さて、圧巻の演奏が終わり一息。ローディーが椅子を並べてマイクの位置などを調整しだしました。ここからしばらくはアコースティックセットのようです。

ポール・デニーは12弦のアコギ(Ovation 1658-4 Custom Legend)ジミーは6弦のナチュラルを抱え「よかったらソックスは脱いでリラックスしてね」という感じで ゆる~く始まります。

このライブ構成は、当時ロックの王者として君臨していた LED ZEPPELIN を参考にしているのは明らか。「世界初のアンプラグド」という間違った解釈は正しましょう。ギターもオベーションだし^^

でも、ロックな曲とアコースティックな曲を同じグループが演奏するという、その垣根を無くしたのはポールなんですけどね。

先の「Rockshow」の歌詞にはジミー・ペイジが登場しますし、「Venus and Mars」の完成披露の席にもペイジは招待されてます。微笑ましいのは、ボンゾことジョン・ボーナムはこのツアーの”追っかけ”だったそうです。どの公演も最前列に陣取って観戦していたとか。Wingsの楽屋で談笑する映像も残されています。

「Richard Cory」はS&Gのカバーです。この選曲もおそらくポール? ちなみにこの演奏では、ジョン・デンバーは出てきません^^


・ ブルーバード -Bluebird

 アルバム『Band on the Run』収められたスタジオ版より高いキーで演奏。

多彩なパーカッションが聴かれたスタジオ版ですが、民族楽器ギロのような音を機械的に再現するためにリズムボックスを使用しています。新しもの好きのポールは観客に「知ってる?」と自慢してますね。「文明の利器とは恐ろしいものだ」。

この曲の魅力は、なんといってもWINGSのコーラスワークの素晴らしさです。映像ではコーラスがあまりMIXされてないのが残念です。

スタジオ版でもソロを弾いハウイー・ケイシーのサックスが渋い!


・ 夢の人 -I've Just Seen a Face

ビートルズ時代の曲で、仮タイトルは ”Auntie Jin’s Theme"だったというスキッフルナンバー。

ジンおばさんは、「幸せのノック(Let 'em In) 」にも登場しますね。
レコード音源(ビートル時代)のキーは”A"なのですが、ここでは1音下げの”G”で演奏されています。でも、ギターの弾き方は同じ^^ ポールは カポがお好きではないようです。


・ ブラックバード -Blackbird

ポールは12弦から6弦のアコギ(Ovation 1619)に持ち替えて弾き語りです。次曲との絡みなのか、1音下げのチューニングとなっており、ボーカルもリラックスした感があります。

ギター小僧だったら誰もが通る登竜門的存在の小曲。そして、ほとんどの人が本人とは違う 間違った?弾き方をしているという不思議な曲です。

「いろんな人がこの曲をコピーして、動画をアップしてるみたいだけど、どれもこれもイマイチだね。俺が一番巧い!」・・・とは本人の弁 ^^;

映像ではポールの顔のアップが多く、イントロ以外はギターを弾く手元が見れません・・・。

ご自分で演奏されるときは、2フィンガーは言わずもがなですが、両足のステップを忘れてはいけませんよ。


・ イエスタデイ -Yesterday

説明不要・・・。じっくりとご鑑賞ください。

あ、ひとつだけ。75年オーストラリア・メルボルン公演の映像にあるように、イントロで違う曲を演奏するというフェイントがこのツアーでもお決まりでした。


・ 幸せのアンサー -You Gave Me the Answer

アコースティックセットがひと段落。バンドメンバーが揃っての後半戦 最初の曲は、ヴォ―ドビル・テイスト溢れた「フレッド・アステアに捧げる」佳曲。

ポールの多才な音楽性のルーツは、ポールの親父さん ジェームスの影響であったのだということに疑いはありません。

ポールはインタビューなどの撮影があると、声色を変えたり、大げさなジェスチャーも交えるサービス精神満点ぶりですが、おそらく幼少期からこうした舞台をよく鑑賞していたのではないかと思われます。

ロックバンドでありながら、このようなジャズ・ナンバーも難なくこなす ポールとバンドメンバーに脱帽です。


・ 磁石屋とチタン男 -Magneto and Titanium Man

なんじゃ?このタイトル・・・と思われた方、ごもっともです。

歌詞も ポールお得意の物語調で、アメリカン・コミックブックに登場する悪役3人が銀行強盗するという荒唐無稽ばなし(笑)。

バックのスクリーンに映し出されるキャラクターたちは、本当にマーベル・コミック社の漫画家ジャック・カービーに絵を依頼したそうです。SF好きでマンガ好き・・・。趣味が高じて「ロックショウ」となりましたとさ!

この曲は歌詞の世界と呼応するようなコーラスが魅力のブギ―曲です。ライブ演奏を盛り上げるリンダのチア・ガールぶりにも注目です。


・ ゴー・ナウ -Go Now

デニーの代表曲。ムーディー・ブルース時代のヒット曲です。オリジナルはベシー・バンクス。

ポールとデニーの出会いは、1963年7月5日 デニー率いるローカルバンド"Denny Laine & The Diplomats"がビートルズ の前座を務めたのがきっかけで交流が始まったといいます。

ポールはこの曲がお気に入りだったようで、ウイングス初期では演奏されなかったこの曲をレパートリーとして勧めていたのです。

ポールと並ぶマルチプレーヤーのデニーがピアノ。キーはA♭で、ポールは”らしくない”ベースのスケールを弾いています。ポールとリンダはワンマイクで仲良く夫婦漫才?…じゃない、コーラスをつけてます。途中の”カックンカックン”のアクションが印象的です(この曲が話題になると必ずこの話になる^^)。


・ マイ・ラヴ -My Love

「すべての恋人たちに・・・」真打ち登場です。

ここではスタジオ版のような甘い(甘ったるい?)歌い方ではなく、弾き語り風に淡々と歌い上げます。同じ音階でも声の出し方で違いをみせるのがポールのボーカルの特徴。

珠玉のバラードとはこの曲ことですが、ジミーがヘンリー・マッカロックの旋律を完コピで奏でるギターソロも素晴らしい。ポールはこの曲のレコーディング風景を鮮明に覚えているそうです。

「・・・・そこで彼がふらふらとやってきて、テイクの直前にこう言ったんだ、「ちょっと違うことをやってみたいんだけど、いいですか?」・・・「もちろん、やってごらんよ。」これは本当にすばらしい瞬間だったと思うよ。疑いなくヘンリーそのものだった。」

ただ、この曲は涙なしでは観れなくなってしまいました・・・。控えめにコーラスをするリンダが神々しく感じられます。どうぞ、安らかに・・・。


・ あの娘におせっかい -Listen to What the Man Said

なんじゃ?このタイトル・・・と思われた方、ごもっともです(また!?)

一昔前は結婚披露宴のBGMによく使われたとか!?

『Venus and Mars』からシングルカットされ全米1位にもなった「これぞポップス!」という軽快なナンバーですが、ここでの演奏はアップテンポで勢いがあります。デニーは最後に思わず「R&R!」と叫んでます。

レコードでは”一発録り”だったというトム・スコットのソプラノサックスを、ホーンメンバーのタデアス・リチャードが見事に再現しています。


・ 幸せのノック -Let 'Em In

「ニューアルバム『Wings at the Speed of Sound』から数曲を・・・」とMC。

イントロのベルは、ジョー・イングリッシュからのプレゼントだったようです。

歌詞の中にジョン(レノン)が出てくるので、ちょっとばかし”ホッとした気分”になったりもします。

ちなみに「Martin Luther」がキング牧師ではなく、ジョンの事(ポールがそう呼んでいたらしい)だという説がありますが、真偽は不明。

マーチング隊?のデニーは「Over America」版で「Happy Birthday, America」と叫んでますね。

アメリカの「Independence Day July 4th」は、「Over America」の年の200年前。試験に出ますよ~


・ やすらぎの時 -Time to Hide

デニーの単独作にして、後にも先にも彼の最高傑作といわれる作品。トラッド調の楽曲が得意 という印象が強いデニーですが、ここは時流に乗ってか、なかなかのロックアレンジを聴かせてくれます。

他人の曲だとガゼン張り切るポールのベースですが、例にもれずここでも大活躍です。

実は、「Rockshow」で難易度の高いベースラインと言えば、この曲とMedicine Jar」なのです。

さらにバックコーラスでの”がなり声”はハンパないです。ライブ中で一番高い音域じゃないかな(地声で)。

ウイングス後期ですが、やはりデニーの作品「Again and Again and Again」でのバックボーカルも もの凄いのです。79年グラスゴー公演のサウンドボード録音盤を聴くと、さすがに直後のMCで「ハァハァ…」言ってます(笑)


・ 心のラヴ・ソング -Silly Love Songs

1976年ビルボード誌年間ランキングNo.1の大ヒット曲。折しもアメリカツアーの真っ最中に1位を獲得。正にこの時期アメリカは「ウイングス一色」だったのです。

評論家たちはまたしてもポールの作品にケチをつけていたようで、この曲はそれへの強烈なカウンターパンチでした。ポールは「誰かの言うこと」にすぐ反応するタチのようで、コンサートでも観客が発した声にいちいち反応する事が多々ありますね。

同じコード進行に3つの違うメロディーを乗せ、遂には同時に歌われるという荒業・・・。もう完璧なアレンジにため息が出るほどです(Red Rose Speedwayで実証済みでしたが…)。しかし ここでのMIXも、 デニー・リンダの声が小さいのでホントに残念。

この曲の肝は、なんといってもベース。コレが無いと曲が成り立たないほどのメロディアスさと軽快さを持っています。これを 歌いながら軽々とこなすポールはやっぱり異次元の人です。

でも、実際に自分でやってみると意外に簡単でしたけどね! ・・・っていうのは冗談です^^


・ 愛の証し -Beware My Love

なんとジョン・ボーナムとセッションしたバージョンが存在していたというロックナンバー。

そのドラミングはアイドルの前で相当恐縮していて、なんとなく控えめな演奏という印象です。やはりここはジョー・イングリッシュに軍配をあげたくなりますね。ライブでのパフォーマンスも素晴らしい!の一言です。

ポールのシャウト、ジミーのギターも炸裂!最後のノリノリ感は鳥肌が立つほどです。


・ ワインカラーの少女 -Letting Go

ホーンメンバー紹介の後に演奏されるのは、『Venus and Mars』からのセカンドシングルで、ブルース調のへヴィロック。ブルースと言えば3コードですが、これは2つしかありません ^^;

ポールのベースはここでも冴えわたっており、付け焼刃ではとても太刀打ちできない巧さです。特にリズムのとり方が独特。さらにホーン・セクションとの絡みも絶妙で、グイグイと引き込まれるような重厚さです。

デニー・リンダのコーラスもいい味出してますね。デニーはハモンドを弾いているようです。

さて、これまた日本語タイトルが意味不明ですが、実は歌詞がチョー卑猥な意味なんだとか…もう変な想像しちゃいます(失礼!)。子どもは歌っちゃダメよ~ ダメよ~ ダメナノヨ



・ バンド・オン・ザ・ラン -Band on the Run

狂熱のロックショーもいよいよ終わりが近づいてきました・・・。ウイングス最高傑作の呼び声高い『Band on the Run』からのタイトル曲でお別れです・・・。「え”~~~~~~!!!」

どこか牧歌的な雰囲気のする楽曲ですが、ここでの演奏はアップテンポで軽快です。ポールが叩いていたドラム(キース・ムーンが驚いたという)とは一線を画すジョーの名演が光ります。

デニーの12弦ギターでのストロークには、おそらくフェイザーが効いていたんじゃないかと思います。足元はジミーと一緒だと推測してます。ステージ写真などで検証したいのですが、なかなか探せていません。詳しい情報をお持ちの方はご教授くださいませm(_ _)m

ところで、ジョンとポールの確執は有名ですが、ジョージとポールの確執も泥沼でした・・・。

この曲はジョージの言葉"If I ever get out of here" が使われてますし”Rabbits on the run!!”の箇所はジョージへのあてつけかな?Magical Mystery Tourで うさぎ だったのは?)


・ ハイ・ハイ・ハイ -Hi Hi Hi

「モット キキタイ??」アンコールに応えてメンバー再登場。盛り上がりも最高潮!

ライブ受けを狙って作られた、もともとはストレートなノリのロックンロールナンバーでしたが、後にシャッフルのリズムにアレンジされた楽曲。

これまた歌詞が・・・。放送禁止も当然!?。


・ ソイリー -Soily

スモークとレーザー光線の演出の中、いよいよクライマックスです。

きわどい歌詞のこの曲は、未発表ながらライブの定番でした。75年くらいまでメジャー基調の曲でしたが、いつの頃からかハードロックなマイナーアレンジに変化しています。やはり、ジミーとジョーの加入は大きかった。ウイングス最強のラインナップです。

そして、最後の雄叫び!! もう何もいうことはありません。昇天のフィナーレ。

最高のエンターテイメント、ロックショーはこれにて閉幕です。

ご清聴ありがとうございました!


演奏者

ウイングス
ポール・マッカートニー: Bass guitar, guitar, piano, keyboards, vocals.
リンダ・マッカートニー: Keyboards, percussion, piano.
デニー・レイン: Guitars, bass guitar, piano, keyboards, percussion, harmonica, vocals.
ジミー・マカロック: Guitars, bass guitar, vocals.
ジョー・イングリッシュ: Drums, percussion.
ホーン・セクション
トニー・ドーシー: Trombone, percussion.
ハウイー・ケーシー: Saxophone, percussion.
スティーヴ・ハワード: Trumpet, flugelhorn, percussion.
タデアス・リチャード: Saxophone, clarinet, flute, percussion.